sinarのブログ

映画製作

あるホームレスの話2

あるホームレスの話 ホープマン
◆映画脚本 ホープマン◆ by Takemoto

あるホームレスの話・ホープマン1からの続き

*注意 著作者に許可無くこの作品を無断で複製、転載

上演、放送などをすることは著作権侵害にあたり

法律によって禁じられています。

この作品はフィクションであり、実在の人物、団体

事件などとは一切関係ありません。

映画脚本 ホープマン・登場人物

山崎 悟・失業し、妻と離婚。再就職もできず

    ホームレスになった男。息子がいる。

    ホームレス歴1年。元営業58才

赤柳弓子・・山崎の元妻。53才

小西敦彦・・本屋の店長。山崎の元仕事関係者50才

楡周平・・街中の寺の住職。53才。

伊藤勝江・・教会関係者。65才。

青木 浩・・ホームレス。61才

映画脚本・ホープマン2 (1からの続き)

◎電話ボックスの中・夜

山崎、電話をかけるが出ない。

電話を切ってもう一度かける。

相手、元妻赤柳弓子が出る。

弓子「もしもし・・。」

山崎「・・もしもし、僕・・山崎だ。」

弓子「・・・。」

山崎「いきなり、電話なんかして、すまん。

  ・・助けて欲しいんだ・・。」

弓子「・・あなたなんか助ける気ないわよ。

  ・・電話なんかかけないで頂戴」

電話を切られる。

山崎「・・・。」

山崎、受話器を置く。

 ◎中位規模の本屋の前

山崎、外から中をうかがっている。店の店員が

不審そうに見て、店長の小西敦彦を呼ぶ。

小西が外に出てきて、山崎に声をかける。

小西「あのー、なにか?」

山崎「・・お久しぶりです。山崎です。」

小西、山崎をまじまじと見て

小西「・・山崎さんって、あの津久井出版の?」

山崎「ええ、そうです。」

小西「・・・そういえば。・・どうかされたんですか?」

山崎「・・お恥ずかしい話ですが、会社をリストラされ

  まして、このような状態になってしまって・・・。」

小西「そうですか。 ・・・それで、何か?」

山崎「・・大変、申し訳ないんですが・・少し、

  助けていただけないかと・・」

小西「・・助けてと言われても・・。

  そりゃ、その節はお世話になりましたけど・・。」

山崎「・・・何でもいいんです。一生懸命働きますし、

  何でもしますから、寝床を与えて頂けないかと。」

小西、困った感じで

小西「・・そんな事言われても・・うち、人手足りてますし」

山崎「・・・お金は要りません。ただで働きます。」

小西「・・すみませんけど、何もお力にはなれそうに

  無いです。」

小西、持っていた財布から壱万円を出して

小西「これで、どうかお引取り願えませんか?」

山崎「・・・結構です。すみませんでした。」

山崎、受け取らずにその場を去る。

小西、山崎の去る後姿を見ながら呟く。

小西「・・山崎さんも、落ちぶれたもんだなぁ・・」

◎街中のお寺

山崎、寺の中に入っていって、袈裟を着た住職

楡周平を見つける。

小楡、山崎を見て、けげんそうな顔をする。

山崎「・・あのー、」

小楡、きつい口調で

小楡「あんた、どっから入ってきたんだ。

  出ていきなさい!

  出ていかないんだったら、警察呼ぶよ!」

山崎「・・あの、別に何も・・・。」

小楡、山崎に出て行けという風に手を下に払う。

山崎、そのまま寺を出て行く。

◎教会の前・夕方

山崎、教会の前で立ち止まっている。

しばらく待って教会のドアを開けて中に入る。

◎教会の中

中には誰もいないが、電気はついている。

山崎、前の方まで歩いて席に座る。

山崎がしばらく座っていると、中から女の人

伊藤勝江が出て来て、山崎を見て声をかける。

伊藤「・・どうかされましたか?」

山崎「あの、教会の方ですか?」

伊藤「ええ、そうですが。何か?」

山崎「あの、私、山崎と言います。 

  ・・死のうと思ったんですが、死に切れずに

  ・・ここに来たら助けてもらえるかと思って

  来てみたんですが・・。」

伊藤「そうですか。・・それは、大変ねぇ。

  希望を捨てず、神様を信じましょう。

  ・・・あの、ここねぇ7時には閉めないといけないのよ。

  ・・また、今度の土日にバザーをする事に

  なってるので、その時に来られるといいんだけど」

山崎「・・・ここに置いて頂けないでしょうか?」

伊藤「・・お気の毒なんだけど、私一人では、

  どうにもできないのよ。・・ごめんなさいね。」 

山崎「・・あなたは、キリスト教の信者なんですか?」

伊藤「ええ。もう30年以上になるかしら。」

山崎「・・そうですか。」

山崎、席を立って

山崎「求めよ、さすれば与えられん・・ですか。」

山崎、独り言をつぶやきながら、教会を出て行く。

山崎「・・水が欲しいと言ったのに、石を投げる者がいるか。

・・門を開けてと言ったのに、門を閉める者がいるか・・・。

  そんな者は・・天国にふさわしくない・・・。」

*あるホームレスの話・ホープマン3に続く。