sinarのブログ

映画製作

あるホームレスの話5

あるホームレスの話・ホープマン5

◆映画脚本 ホープマン◆ by Takemoto

あるホームレスの話 ホープマン4からの続き

◆映画脚本・ホープマン◆

◎西導寺の本堂

山崎、本堂で何か考え事をしている。

◎西導寺の廊下

山崎、廊下を掃除している。 

山崎、一休みして、庭をボーっと眺めている。

そこに天宮がやって来て、山崎に

天宮「山崎さん。今日は、私と幼稚園に行きませんか?」

山崎「・・幼稚園ですか。」

天宮「ええ。子供達にお話をしに行くんです。」

山崎「私も一緒に行っていいんですか?」

天宮「ええ。出かける支度をしてきてください。」

山崎「はい。」

◎幼稚園・体育館

子供達が30人前後集まって座っている。

天宮が子供達の前に立って話をする。

山崎、離れた後ろの方で立って見ている。

天宮「皆さん、こんにちは。」

子供「こんにちはー。」

天宮「元気が良くていいですね。元気が一番です。

  今日はね、命についてお話をしようと思います。

       命って、わかりますか?

  命っていうのはね、皆、生きてますよね。

      生まれてきて、生きているのは、命があるから

      なんです。皆、心臓が動いてるでしょう? 

  胸に手を当てると心臓が動いてるの、わかるかな?

      ドキドキしてるのね。

  自分の命をつないだ昔の人をご先祖様と言います。

  皆にご先祖様がいたから、今、皆は命があるんです。

わかりますか?お父さん、お母さんがいなかったら、

皆さん、生まれてきてないでしょ。

  お父さんお母さんのお父さんお母さんはおじいちゃん

おばあちゃん、その前はひいおじいちゃん、

ひいおばあちゃん、その前はひいひいおじいちゃんと

  ずーっと命をつないでくれたご先祖様がいて、

今、皆は生きてるんです。

  皆さん、お腹がへったりするでしょ。

生きているからお腹がへるんですね。

  人間は色んな物を食べますね。

好きな食べ物、何ですか?」

子供達「やきにくー。」「いちご」「おすしー」

天宮「そうですね。みんな、おいしいですね。

  食べ物は、みんな、命があるものです。

お肉でも、お魚でも野菜も果物もそうですね。

虫さんもお花も、みんな命があります。

  お花はね、種があります。種から芽が出て、

大きくなって花を咲かせます。

  そして、花が散って、また種を残しますね。

  命のあるものは、みんな生きようとしています。

  でも、生きていく為に色んなものを犠牲に

して生きています。

  人間は、他の生き物の命を犠牲にして生きています。

だから、その犠牲を無駄にしないようにしないと

いけません。

  無駄にしないようにするには、命を全うしないと

いけません。

  命を全うするというのは、命がある限り、生きる

      という事です。

  わかりますか? 

皆、年をとっていくと私みたいにおじいさんや

おばあさんになっていきます。

  そして、死んでいきます。死ぬっていうのは、

命がなくなる事です。心臓もドキドキしません。

息も吸わないし、吐くこともしません。

  お腹もすきません。別に怖い事ではありません。

死んでも魂はあの世にいって、極楽浄土で暮らします。

極楽浄土っていうのは天国とも言うし、

楽しい幸せな所ね、

悪い事をしたら地獄に落ちると言うけど、

反省したら地獄には落ちません。

  命あるものはすべて、いつか死にます。

だからこそ、生きるという事を大事にしないと

いけません。

みなさん、命を大切にしてください。

人も動物も虫もお花の命も大事です。

命を粗末にしてはいけません。

     わかりましたか?」

子供達「はーい。」

山崎、天宮の話を後ろで真面目に聞いて立っている。

 

◎幼稚園からの帰り・西導寺の門前・午後

山崎、天宮と話をしながら歩く。

山崎「今日は、いい話を聞かせていただきました」

天宮「少し、気分転換にでもなりましたか。」

山崎「はい。身につまされるものがあります・・」

天宮「・・仏教でもキリスト教でも自殺という

のは、罪とされているんですよ。

  罪の中でも重くて、ひどい地獄に落ちると

言われてるのね。

  なぜだかわかりますか?」

山崎「・・さあ?」

天宮「さっきも話したとおり、命は先祖がつないで

くれたものだし、命をつないでいくまでに

犠牲は一杯払われているわけでしょ。

謙虚にとらえれば。虫一匹の犠牲でもね。

  人殺しは、人の命を犠牲にしてしまうけれども

その人がその人生を命がある限り生きるのであれば

ある種の報いは受けたといえるでしょう。

  でも自殺の場合はそうではなく、命への感謝も無く

先祖に対しても命を与え、犠牲を払って産んだ親や

育てた者に対しても、自分が産まれ生きていくのに

払われた犠牲にも報いようともしないで、命を

粗末に捨てるという行為は結局、虫一匹の犠牲にも

報いない生きとし生けるものへの侮辱行為になる

んですね。

虫でも何でも自分の命を犠牲にされたのに報いて

もらえず、犠牲が無駄にされては、犠牲になった

価値も出ないでしょうが、報いてくれるなら

犠牲にも価値は出ますからね。

自分がこの世に生まれてきた以上、犠牲に報いる

責任がありますから、それから逃げれば

責任放棄になるし、自分と命を与えた全ての犠牲に

価値が無いものと裁く自殺は、自分に命を与えたもの

すべてに対する最大の侮辱行為なので罪が重いと

されてるんです。

神や先祖、親、生きとし生けるものにツバをはく

行為ですから。

自分の命は自分だけのものでは無いんです。

他の者から与えられたものですから。

山崎さん、自殺をとどまって正解でしたよ。」

山崎「・・そうですね。反省して、頑張ります。」    

 

それから半年後・2001年

◎西導寺・天宮の部屋

天宮、机に向かって何か書いている。

山崎が部屋の前に来て

山崎「失礼します。山崎です。」

天宮、返事をする。

天宮「はい。どうぞ。」

山崎、戸を開けて礼をして、部屋に入って座る。

天宮「ここでの生活は、どうですか?」

山崎「はい。本当にここに置いていただいて、

        有り難く思っています。

  何から何まで、お世話になりっぱなしで・・」

天宮「答えは、見つかりましたか?」

山崎「・・はい。・・正直、まだ、迷いもあります。

でも、もうここを出ようと思います」

天宮「・・そうですか。あなたの望みが叶う

ように、健闘を祈ります。」

山崎「ありがとうございました。」

天宮「・・どこか、行くあてはあるんですか?」

山崎「・・いいえ。街で、どこか働ける所を

探そうと思っています。」

天宮「・・もし、困った事があったら、

ここを訪ねるといい。」

天宮、山崎に紙を渡す。

天宮「そこに、私の知り合いがいます。

何か助けになるでしょう。」

山崎「・・でも、」

天宮「心配はしなくてもよろしい。

少しは役に立つだろうから。」

天宮、微笑んで

天宮「それと、」

天宮、封筒を出して山崎に渡す。

天宮「これを持っていきなさい。」

山崎「・・何でしょうか?」

天宮「たいした額ではないが、選別にね。」

山崎「でも、そんな、頂けないです。

こちらがお世話になったのに、お金なんて」

天宮「君はちゃんと寺で働いてくれましたし、

普通の所で働けば、もっとあげないと

  いけないくらいですよ。

気にせず、貰っておいてください。」

山崎「・・・本当に、すみません。

ありがとうございます。」

◎西導寺・庭先

山崎、少ない荷物を持って、感慨深げに寺を見つめる。

◎西導寺・門前

天宮、橘その他のお坊さんが、旅立つ山崎を見送る。

山崎、天宮と橘と握手をする。

山崎「じゃ、お元気で。」

天宮「頑張ってきなさい。」

山崎「はい。」

橘 「うまくいくよう祈っています。お元気で。」

山崎「ありがとう。頑張るよ。

  皆さん、ありがとうございました。

お世話になりました。

・・それでは、失礼します」

山崎、礼をして、寺を去っていく。

*映画脚本ホープマン後編に続く。

あるホームレスの話4

あるホームレスの話 ホープマン4

◆映画脚本 ホープマン◆ by Takemoto

*注意 著作者に許可無くこの作品を無断で複製、転載

  上演、放送などをすることは著作権侵害にあたり

  法律によって禁じられています。

この作品はフィクションであり、実在の人物、団体

事件などとは一切関係ありません。

あるホームレスの話・ホープマン3からの続き

◆映画脚本・ホープマン◆

◎西導寺・その周辺

寺の生活に慣れた山崎が座禅を組んだり山道を

歩いたり、托鉢について行ったりする。

◎西導寺・裏山の庭・見晴らしのいい高台・夕方

山崎、一人で庭をほうきで掃いている。

そこに橘がやって来て山崎に声をかける。

橘 「・・どうですか?」

山崎「ああ、橘さん。どうも。」

橘 「ここでの生活にも、だいぶ慣れましたか?」

山崎「はい。おかげさまで。」

橘 「・・ここ、景色がいいでしょ。」

山崎、風景を眺めて

山崎「そうですね・・。

  東京では見られない景色ですね。」

橘 「・・私も昔、東京に住んでたんですよ。」

山崎「へぇ、そうなんですか。」

橘 「座りませんか?」

山崎「・・はい。」

二人、並んで座れる所に座る。

橘 「・・私、昔は、すごい不良だったんですよ」

山崎「・・橘さんが不良ですか? 

  ・・想像できないですね。」

橘 「そうでしょう。私も鏡見ると思います。

  ・・中学の時からひどくてね。

  自分の気にくわない事があったら、人に

  当たり散らして・・。

  16の時にね、私、人、殺しちゃったんですよ。」

山崎「・・・。」

橘 「・・驚いたでしょ。」

山崎「・・・。」

橘 「・・・その時は、もう、どうでもよかった

  んですね。自分も他の人も。自暴自棄になってて。

  ・・それで、少年院に入れられまして、その時、

  天宮さんに会ったんですよ。

  天宮さんに会ってなかったら、私、今頃死んでるか

  刑務所でしょうね・・。

  自分でも悪い事をしたのは、わかってたんですよ。

  でも、もうやってしまった事は取り返しがつかな

  いし、謝ってすむ話でも無いですしね・・。

  それで、もうどうにでもしてくれればいいやって、

  開き直ってたんですよね・・。

  クズ呼ばわりされてましたから。クズならクズと

  して生きてやらあ、みたいなね。

  ・・天宮さんにね『君は幸せか?』って聞かれた

  んですよ。

  もちろん、そんなわけ無いじゃないですか。

  まあ、バカバカしくて答えなかったんですよ。

  そしたら今度は『苦しいか?』って聞くんですよ。

  何を言ってるんだ、このじいさんは、と思ってね。

  で、黙ってたら、『君が幸せであるんだったら、

  なぜこんな所にいるんだろう? ・・世間から

  隔離されて、疎まれ、裁かれる様な所に。

  自分を愛しているなら、なぜ、自分を苦しめる

  状況に陥らせたんだろう?

  もっと幸せで自由な世界があるのに』ってね・・。

  『君が苦しんでいるなら、君は自分を愛せなくて、

  憎んでいるんだろう。自分を許せないんだろう。

  そうじゃないかね?』と言われてね・・。

  私、自分が嫌いで憎くてたまらなかったんですよ。

  ・・どうせ、自分みたいな者はどうしようもない

  奴だと思って、死ぬ勇気は無いのに、

  人を傷つける事で自分を価値の無い者にしてしまおう

  みたいなね、・・・自虐的な方法なんですよね。

  ・・人を巻き込んでね。」

橘、一息おいて

橘 「・・・で、ただ苦しんでるだけではしょうが

  ないし、死ぬのは簡単ですが、死んでも犠牲が

  無駄になりますしね・・。

  天宮さんに『自分を苦しめるのはやめて、自分を

  許しなさい。そして犠牲に報いるよう生きなさい』

  って言われて・・

  はじめて、自分が生きていく希望を見つけた

  ような気がしました。

  ・・それまでは、どうでもよかったんですけど・・。

  で、天宮さんのようになりたいと思いました。

  それで、ここに来たんです。 

  ・・・長い話だったでしょ?」

山崎、神妙な顔つきで話を聞いていた。

橘 「・・・山崎さんは?」

山崎「・・・私は、すべて失いました。自業自得です。

  何もありません・・。体だけです。

  その体だけでも何かの役に立たせようと思って。

  ・・どうやって、役に立てるのか。

  ・・自分に出来る事は何か・・考え中です。

  ・・自分には何も無いのに、どうやって行動

  すればいいのかわかりません。」

橘 「・・・いずれ、わかりますよ。望みは叶います。

  私達に必要なものは、すべて与えられていますから」

橘、山崎に微笑む

*あるホームレスの話5に続く。

 

あるホームレスの話3

あるホームレスの話 ホープマン

◆映画脚本 ホープマン◆ by Takemoto

*注意 著作者に許可無くこの作品を無断で複製、転載

上演、放送などをすることは著作権侵害にあたり

法律によって禁じられています。

この作品はフィクションであり、実在の人物、団体

事件などとは一切関係ありません。

映画脚本 ホープマン・登場人物

山崎 悟・失業し、妻と離婚。再就職もできず

    ホームレスになった男。息子がいる。

    ホームレス歴1年。元営業58才

天宮忠信・・山奥の寺、西導寺の住職。70代

橘 創二・・西導寺にいる天宮の弟子。35才

原 紀一・・西導寺にいるお坊さん。28才

あるホームレスの話・ホープマン2からの続き

◆映画脚本・ホープマン◆3

◎人里離れた道

山崎、つらそうに道を歩いている。

山崎、出会った人に道を聞く。

◎山道・夕方

山崎、息苦しそうに山道を歩いていく。

と、山寺にさしかかる。

★寺の名前 西導寺

 

◎西導寺・玄関・夕暮れ時

山崎、寺の門をくぐって中に入る。玄関に着いて

声をからせ、人を呼ぶ。

山崎「・・すみません。

  ・・どなたか、おられませんか・・・。」

山崎、疲れのあまり、座り込む。

しばらくして、お坊さん原紀一28才が出てくる。

原、座り込んでいる山崎を見て

原 「どうされました?」

山崎「・・あの、ここの住職に・・会わせて

  頂きたいん・ですが・・・。」

原 「・・大丈夫ですか? 

  少しお待ちください。水を持ってきますので」

原、中に入って、コップに水を入れて持ってくる。

原 「お水どうぞ。」

原、山崎にコップを渡す。

山崎、コップを持って一口飲んで

山崎「・・ありがとうございます。」

原 「・・立ち上がれますか?」

山崎「はい、なんとか。」

山崎、立ち上がろうとする。

原、山崎の体を支えてやって中へ案内する。

原 「住職の方は、ただ今外出しておりますので

  中で少しお休みになって下さい。」

山崎「・・すみません。」

◎西導寺・廊下から部屋

身綺麗になった山崎が原に案内され、部屋に

とおされる。

原 「ここで少し、お待ちください。

  住職が来られますので。」

山崎「はい。 よろしくお願いします。」

原、部屋を出て行く。

山崎、少し緊張した面持ちで座っている。

しばらくして、住職の天宮が、部屋に入ってくる。

天宮「お待たせして、すみませんね。」

天宮、山崎の前に座る。

天宮「私、天宮と言います。お名前の方は?」

山崎「山崎悟と申します。

  いきなり訪ねて来て、申し訳ありません。」

天宮「いやいや、気にしなくていいですよ。

  少し、他の者から話を聞きましたが、

  ずいぶん遠くの方から来られたそうで

  お疲れになったでしょう。」

山崎「・・ここに来る事が、自分に・・必要だと

  思い、来ました。」

天宮「・・ここをご存知だったんですか?」

山崎「はい。昔、雑誌か何かで厳しいお寺だ

  という事を見た覚えがありまして・・」

天宮「ここに、何を求めて来られたんですか?」

山崎「・・私は、死のうと思っていました。

  ・・・今までいい生き方をしたとは

  言えません。自分勝手に生きてきたと思います。

  家庭を失い、仕事を失い、財産も失いました。

  ・・希望も捨てていました。

  でも・・死のうとした時に思いました。

  命を粗末にして何になるのか・・

  逃げたところで何があるのかと。

  ・・・生きなければならないと思いました。

  ・・人生を無駄にしてはいけないと。

  ・・知り合いに助けを求めたんです。

  ・・でも、断られました。

  本当に自分が情けなくなりました。

  ・・頼れる人も助けてくれる人もいない

  ・・惨めな者だと・・。・・自業自得ですが。

  ・・寺や教会にも行ってみましたが、あてには

  なりませんでした。    

  ・・私は、残りの人生を人のために

  役立たせたいと思いました。

  そのために、自分を救わなければと思い、

  それで、ここに来たんです。

  学ぶべき事を学ぶために・・答えを知るために。」

天宮「・・わかりました。あなたが答えを得られる

  よう協力しましょう。

  しばらく、ここで生活しなさい。」

山崎、涙ぐみ、心からの感謝を込めて

山崎「・・ありがとうございます。感謝します。

  ありがとうございます。」

 

◎西導寺・廊下・朝

天宮が山崎に声をかける。

天宮「眠れましたか?」

山崎「はい。おかげさまで。」

天宮「しばらく寺の生活に慣れるのに時間も

  かかるでしょうが、頑張りなさい。」

山崎「はい。」

天宮、少し遠くで寺の掃除をしている橘創二を呼ぶ。

天宮「橘君、こっちに来てください。」

橘、天宮の方に来る。天宮、橘に

天宮「こちら、昨日来られた山崎さん。」

天宮、山崎に

天宮「こちら、橘君。」

天宮、橘に

天宮「山崎さんに寺の方、案内してあげて。あと、

  ここでの生活の仕方、教えてあげてくれますか」

橘 「わかりました。今から、案内しますか?」

天宮「君、仕事の方、いいの?」

橘 「はい。他の者に頼みますから。」

天宮「それじゃ、後よろしく頼みます。」

橘 「はい。」

橘、山崎に

橘 「じゃ、こちらの方にどうぞ。」

山崎、天宮に礼をして、橘の後について行く。

◎西導寺・各所

山崎、橘に案内され、色々な所を見て回る。

山崎、橘について行きながら

山崎「・・橘さんはお寺の住職になる為に、

ここにいらっしゃるんですか?」

橘 「いいえ・・。

  話すと長くなるので、落ち着いて話ができる

  時にいつか、お話しましょう。」

橘、微笑む。

山崎「・・・。」

橘 「・・他に、何かお聞きになりたい事は

  ありませんか?」

山崎「・・お経は、覚えるんですか?」

*あるホームレスの話・ホープマン4に続く

 

 

 

あるホームレスの話2

あるホームレスの話 ホープマン
◆映画脚本 ホープマン◆ by Takemoto

あるホームレスの話・ホープマン1からの続き

*注意 著作者に許可無くこの作品を無断で複製、転載

上演、放送などをすることは著作権侵害にあたり

法律によって禁じられています。

この作品はフィクションであり、実在の人物、団体

事件などとは一切関係ありません。

映画脚本 ホープマン・登場人物

山崎 悟・失業し、妻と離婚。再就職もできず

    ホームレスになった男。息子がいる。

    ホームレス歴1年。元営業58才

赤柳弓子・・山崎の元妻。53才

小西敦彦・・本屋の店長。山崎の元仕事関係者50才

楡周平・・街中の寺の住職。53才。

伊藤勝江・・教会関係者。65才。

青木 浩・・ホームレス。61才

映画脚本・ホープマン2 (1からの続き)

◎電話ボックスの中・夜

山崎、電話をかけるが出ない。

電話を切ってもう一度かける。

相手、元妻赤柳弓子が出る。

弓子「もしもし・・。」

山崎「・・もしもし、僕・・山崎だ。」

弓子「・・・。」

山崎「いきなり、電話なんかして、すまん。

  ・・助けて欲しいんだ・・。」

弓子「・・あなたなんか助ける気ないわよ。

  ・・電話なんかかけないで頂戴」

電話を切られる。

山崎「・・・。」

山崎、受話器を置く。

 ◎中位規模の本屋の前

山崎、外から中をうかがっている。店の店員が

不審そうに見て、店長の小西敦彦を呼ぶ。

小西が外に出てきて、山崎に声をかける。

小西「あのー、なにか?」

山崎「・・お久しぶりです。山崎です。」

小西、山崎をまじまじと見て

小西「・・山崎さんって、あの津久井出版の?」

山崎「ええ、そうです。」

小西「・・・そういえば。・・どうかされたんですか?」

山崎「・・お恥ずかしい話ですが、会社をリストラされ

  まして、このような状態になってしまって・・・。」

小西「そうですか。 ・・・それで、何か?」

山崎「・・大変、申し訳ないんですが・・少し、

  助けていただけないかと・・」

小西「・・助けてと言われても・・。

  そりゃ、その節はお世話になりましたけど・・。」

山崎「・・・何でもいいんです。一生懸命働きますし、

  何でもしますから、寝床を与えて頂けないかと。」

小西、困った感じで

小西「・・そんな事言われても・・うち、人手足りてますし」

山崎「・・・お金は要りません。ただで働きます。」

小西「・・すみませんけど、何もお力にはなれそうに

  無いです。」

小西、持っていた財布から壱万円を出して

小西「これで、どうかお引取り願えませんか?」

山崎「・・・結構です。すみませんでした。」

山崎、受け取らずにその場を去る。

小西、山崎の去る後姿を見ながら呟く。

小西「・・山崎さんも、落ちぶれたもんだなぁ・・」

◎街中のお寺

山崎、寺の中に入っていって、袈裟を着た住職

楡周平を見つける。

小楡、山崎を見て、けげんそうな顔をする。

山崎「・・あのー、」

小楡、きつい口調で

小楡「あんた、どっから入ってきたんだ。

  出ていきなさい!

  出ていかないんだったら、警察呼ぶよ!」

山崎「・・あの、別に何も・・・。」

小楡、山崎に出て行けという風に手を下に払う。

山崎、そのまま寺を出て行く。

◎教会の前・夕方

山崎、教会の前で立ち止まっている。

しばらく待って教会のドアを開けて中に入る。

◎教会の中

中には誰もいないが、電気はついている。

山崎、前の方まで歩いて席に座る。

山崎がしばらく座っていると、中から女の人

伊藤勝江が出て来て、山崎を見て声をかける。

伊藤「・・どうかされましたか?」

山崎「あの、教会の方ですか?」

伊藤「ええ、そうですが。何か?」

山崎「あの、私、山崎と言います。 

  ・・死のうと思ったんですが、死に切れずに

  ・・ここに来たら助けてもらえるかと思って

  来てみたんですが・・。」

伊藤「そうですか。・・それは、大変ねぇ。

  希望を捨てず、神様を信じましょう。

  ・・・あの、ここねぇ7時には閉めないといけないのよ。

  ・・また、今度の土日にバザーをする事に

  なってるので、その時に来られるといいんだけど」

山崎「・・・ここに置いて頂けないでしょうか?」

伊藤「・・お気の毒なんだけど、私一人では、

  どうにもできないのよ。・・ごめんなさいね。」 

山崎「・・あなたは、キリスト教の信者なんですか?」

伊藤「ええ。もう30年以上になるかしら。」

山崎「・・そうですか。」

山崎、席を立って

山崎「求めよ、さすれば与えられん・・ですか。」

山崎、独り言をつぶやきながら、教会を出て行く。

山崎「・・水が欲しいと言ったのに、石を投げる者がいるか。

・・門を開けてと言ったのに、門を閉める者がいるか・・・。

  そんな者は・・天国にふさわしくない・・・。」

*あるホームレスの話・ホープマン3に続く。

 

 

 

あるホームレスの話

あるホームレスの話 ホープマン
映画脚本 ホープマン◆ by Takemoto 
*注意 著作者に許可無くこの作品を無断で複製、転載、上演、
放送などをすることは著作権侵害にあたり法律によって禁じられています。
この作品はフィクションであり、実在の人物、団体
事件などとは一切関係ありません。

映画脚本 ホープマン・登場人物

山崎 悟・失業し、妻と離婚。再就職もできず

    ホームレスになった男。息子がいる。

    ホームレス歴1年。元営業58才

佐川淳也・元役者、演出家。ホームレス歴半年55才

島中 源・元ヤクザ2度結婚し離婚。強盗傷害致死

    服役6年。ホームレス歴2年63才

吉原敏雄・元料理人。妻と死別ホームレス歴2年65才

寺田光貴・元経理。不正経理で逮捕。保釈後ホームレス

    家族無し。ホームレス歴1年。48才

天宮忠信・・山奥の寺、西導寺の住職。70代

橘 創二・・西導寺にいる天宮の弟子。35才

赤柳弓子・・山崎の元妻。53才

浅倉智彦・・山崎の昔の仕事関係者。48才。

小西敦彦・・本屋の店長。山崎の元仕事関係者50才

高木周平・・街中の寺の住職。53才。

伊藤勝江・・教会関係者。65才。

青木 浩・・ホームレス。61才。など

映画脚本・ホープマン◆ 1

◎街の風景・東京・晴れ・2000年

青空が広がり、太陽が輝いている。

穏やかな空が広がっている。

山崎ナレーション 「・・希望とは、何なのだろう?」

 ◎ひと気の無い道端の隅

ホームレスの山崎が地味な格好で道端に寝ている。

 ◎駅近くの道・夕方

山崎、疲れた感じで道を歩いている。

踏み切りにさしかかり、鳴っている踏切の信号を

ボーっと見る。

電車が通過する。

遮断機の棒が上がって、山崎、踏み切りを渡る。

色々な人とすれ違う。 

山崎そのまま歩き、座れる場所を見つけて座る。

ボーっと人が通るのを眺めていると、一人の男が

山崎を遠目に見ている。

男、山崎の昔の仕事関係者、浅倉智彦。

浅倉が山崎に近寄って、声をかける。

浅倉「・・・あのー、もしかして、山崎さん

    じゃないですか?」

山崎、声をかけてきた男を見る。

浅倉「山崎さん・ですよねぇ。覚えてませんか?

     浅倉です。友田企画の」

山崎、思い出して

山崎「・・ああ、浅倉さんですか。」

浅倉「いやぁ、お久しぶりです。もう、何年に

  なりますかねぇ?5年ぶりかなぁ。

  ・・その節はどうも。」

山崎、会釈する。

浅倉「いやぁこんな所でお会いするとは・・。

  今は、どうされてるんですか?」

山崎「・・リストラされましてねぇ。」

浅倉「・・あぁ、そうなんですか。それは・・

  大変ですねぇ。

 ・あの、私これから出張なんですが、あの・・」

浅倉、財布から壱万円を出して

浅倉「これ、よかったらどうぞ。前にご馳走になって

お世話になりましたから。本当はご一緒に食事

でもしたいんですが、時間が無くて、そういう

わけにもいかないんで・・。」

山崎「・・いや、いいです。そんな、もらえません」

浅倉「いやいや、ほんとにその節はお世話になった

  んで、遠慮しないで下さい」

浅倉、山崎に壱万円を押しつけて

浅倉「じゃ、もう時間が無いので失礼します。」

浅倉、その場を去りながら

浅倉「お体に気をつけて、元気出してください。じゃ。」

浅倉、駅の方に去って行く。   

山崎、手に持たされた壱万円を見ながら、つぶやく。

山崎「・・・憐れみを受けるようになったか・・。」

山崎、やるせないようにため息をつく。

 ◎地下街の隅・夜

人通りはない。山崎、道の端の方に座っている。

そこにホームレスの吉原敏雄がビール片手に歩きながら

山崎の方に近づいて来て声をかける。

吉原「・・おい、お前さん。名前、何てゆーんだ?」

山崎、吉原が自分に声をかけたのに気付いて、吉原を見て

山崎「・・山崎です。」

吉原「ビール飲むか?」

山崎「・・いいです。」

吉原「飲めねーのか?」

山崎「・・いえ。」

吉原「じゃあ、飲みなよ。」

吉原、ポケットから缶ビールを出し蓋を開けて

吉原「ほら、どうぞ。」

吉原、ビールを山崎に渡して、横に座る。

吉原「はい、乾杯。」

吉原、山崎の缶ビールに乾杯して、ビールを飲む。

山崎、戸惑いながらもビールに少し口をつける。

吉原「お前さんは、帰る家ないの?」

山崎「・・まあ。」

吉原「どれぐらい?」

山崎「1年くらいですが。」

吉原「そうかい。・・俺の方が先輩だな。

俺はもう2年だからな。」

山崎「・・・・失業、したんですか?」

吉原「いやぁ失業というか、自分で辞めたんだな・・。

  やる気が失せちまって、店たたんで。

・・俺、元料理人なんだよ。」

山崎「へぇ、どういう料理を?」

吉原「日本料理屋やってたんだよ。

これでも昔は、年収一千万近く儲けた時も

あったんだけどね・・。

奥さんが死んじゃってから、ダメよ。

・・やる気も何にも無くしちゃって。

・・死のうと思ったけど、死に切れず。」

山崎「・・・。」

吉原「あんたは? 奥さん、いたの?」

山崎「・・まあ。離婚しましたけど。」

吉原「そうかい。・・子供は?」

山崎「・・いましたけど。

・・今は、独立して北海道に・・。」

吉原「へー北海道ねぇ・・北海道はでっかいどーってね」

吉原、山崎に笑いかけるが

山崎「・・・。」

吉原「あんた、ちょっとは笑いなさいよ。」

山崎「すみません。・・・お名前は?」

吉原「ああ、名乗るほどのもんじゃないけど、

吉原敏雄ってゆーんだ。」

山崎「吉原さんですか。どうも、ごちそうさまです」

 ◎公園・昼前

人通りが少しある。吉原、山崎を連れて公園に来る。

公園の木陰のベンチで寝ている男、島中源がいる。

吉原が島中に声をかける。

吉原「島ちゃん、もう昼だぜ。寝てんのかい?」

島中、目を開けて

島中「・・ああ、吉原さんかい。」

島中、起き上がって、山崎を見て

島中「新顔?」

吉原「ああ、山崎さんだよ。」

吉原、山崎に島中を紹介する。

吉原「この人、島ちゃん。ケンカ、強いんだって」

山崎「どうも。山崎です。」

島中「どうも。 ・・どれくらいなの?」

山崎「? ・・ああ1年です。」

島中「へー。」

島中、あくびをして

島中「・・腹へった。」

吉原「・・食べてないの?」

島中「ああ。この間の炊き出しちょっと食って、

それから食べてないな。」

吉原「歩いてないの?」

島中「腹、へるからな。どっかやってる?」

吉原「この間、教会でやってたよ。」

島中「ああ、あそこまで行くのがおっくうだからな」

山崎「・・・あの、よかったらこれで。」

山崎、ポケットから壱万円を出す。島中、それを見て

島中「あんた、金持ちじゃん。働いてんの?」

山崎「いいえ、昨日たまたま知り合いに会ったら

恵んでもらいまして・・。」

島中「へー、いい知り合いだねぇ。」

吉原「山崎さん、そういうのはとっといた方が

  いいんじゃないの?」

山崎「いいえ、どうせ使わないつもりでしたから・・」

島中「・・おごってくれるの?」

山崎「ええ。これで何か食べましょう。」

 

★山崎と吉原、島中、買ってきた物を公園で三人、

楽しそうに食べる。

 

◎川沿いの道

山崎が歩いていると、苦しそうに顔をゆがめたホームレス

らしき男、佐川が道に倒れこんでいる。

遠巻きに人が通っていく。山崎、佐川に声をかける。

山崎「・・大丈夫ですか?」

佐川、山崎を見るが何も言わないで、うなっている。

山崎「・・救急車呼びましょうか?」

佐川「・・いい。・・水・・くれ。」

山崎「水ですか?」

山崎、あたりを見回して、自動販売機を見つけて

山崎「何か飲み物でいいですか?」

佐川、うなずく。

山崎「ちょっと待ってくださいね。」

山崎、自動販売機に飲み物を買いに行って、

飲み物を持って戻ってくる。

山崎「こういうのしか、なかったんですけど・・。」

山崎、スポーツドリンクを佐川に渡す。

佐川、起き上がって飲み物を飲む。

山崎「大丈夫ですか。病院に行かなくて?」

佐川「・・病院に行くんだったら、死んだ方がいい

んです。・・・すみません。これ。」

佐川、飲んだ飲み物を上げて

山崎「いいえ。・・あの、食事の方はされてないんですか?」

佐川、力なくうなずく。

山崎、ポケットから5千円を出して

山崎「・・これ、よかったらどうぞ。」

佐川「・・・でも。」

山崎「よければ、なんで。」

佐川「・・・いいんですか?」

山崎「はい。」

佐川「・・・。」

佐川、5千円を受け取って

佐川「・・すみません。」

山崎「じゃ、大丈夫ですか?」

佐川「はい。」

山崎「じゃ、失礼します。」

山崎、去っていく。佐川、去っていく山崎に、力なく

佐川「・あ、ありがとうございましたぁ。」

 ◎ひと気の無い場所の植え込み沿い

ホームレスの寺田光貴が植え込み沿いの側で寝ている。

山崎、寺田を遠くの方から見ている。

山崎、ポケットにあるお金を出して、見る。

3千円と小銭が少しある。

山崎、寺田に近付いて、様子を見ている。

寺田、人の気配に気付いて、近くにいた山崎を

いぶかしげに見る。

寺田、少しイラついた感じで

寺田「・・何、見てんだよ。ジジイ。

近付くんじゃねえよ。どっかいけよ!」

山崎「・・・あの、もし良かったら、これどうぞ。」

山崎、寺田に3千円を差し出す。

寺田、それを見て無表情に起き上がり

寺田「・・あんた、何様なんだよ? 

人に金渡して、いい人ぶる気かよ。」

山崎「いえ、そういうんじゃないんです。

  ・・私、いらないんで・・良ければ使って頂け

  ればと思って・・。」

寺田、鼻で笑って

寺田 「じゃ、もらってやるよ。」

寺田、山崎から3千円を受け取って、嫌な感じの

目つきで山崎を見ながら、その3千円を破って捨てる。 

寺田、そのまま、また横になる。

山崎、少し呆気に取られながら

山崎「・・気に障ったら、すみません。」

寺田、無視する。

山崎「・・・。」

山崎、その場を去る。

◎街中・夕方

山崎、街をどこをともなく歩きながら上を見回す。

高いビルやマンションが見える。独り言をつぶやく。

山崎 「・・そろそろ、潮時だな。」

山崎、ひと気の無い建物に目をつける。

◎ひと気の無い建物の屋上・夕方

ちょうど夕焼けがきれいに見える。

山崎、屋上に立って景色を眺めている。

山崎 「・・・・これで、見納めか。」

夕焼けが明るさを増し街並みがオレンジ色に染まる。

山崎、屋上のへりに身を乗り出し、夕焼けに

染まった街並みを見て深呼吸をする。

山崎の目に涙があふれてくる。

山崎その時、死んで何になるんだ今まで何をしてきた

のかと思い、生きる決意をする。

 

あるホームレスの話・ホープマン2に続く。

 

 

 

 

 

 

 

映画タイム・ハンガーゲーム

映画ハンガーゲームを見た感想

ハンガーゲーム1は独裁国家での娯楽として

貧しい人達の地域から若者を選んで殺し合いをさせ

生き残った1人を讃えるみたいなゲームを行う。

ま、大して有名な人は出ていないがそれなりに面白い。

若者に殺し合いをさせるのはバトルロワイヤルみたい。

アメリカのショービジネスの裏側を皮肉的に

描いてるみたい。

選ばれた人のスタイリストみたいな役で

ミュージシャンのレニークラヴィッツが出ててびっくり

似た人かと思ったら本物だった。

ハンガーゲーム2の方はちょっとお金をかけて

スケールアップ。

元ハンガーゲームの優勝者達でゲームを再び行う。

ハンガーゲームのプロ達との戦い。

ただ独裁者達への反乱の予兆が出始めていく。

で、3へと続く。

ハンガーゲーム1・2を見て、それなりに良いが

しょぼさも少し感じる。大スター感のある人がいない。

DVDで十分かな。

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